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2007.08.17
創作ホラー「マネキンカーブ」
夏らしく、怖い話でもひとつどうでしょうか?


ある所にAとBと言う大学生がいた。

彼らは心霊サークルに所属しており、怖い話を集めたり
心霊スポットへ行ったりするのが趣味だった。

ある日AはBにこう尋ねた。

「なぁ、”マネキンカーブ”って知ってる?」
「いや知らない、何それ?」

「学校の近くにある山道に急なカーブがあるんだけど、
 みんなからなぜかマネキンカーブって言われてるんだよ」
「へぇ、急カーブってそんなに危ないの?」

「そうらしい、山道の上にガードレールもないし、夜に行ったら
 確実に事故っちゃいそうなぐらい急なんだってさ」
「そんで、そこに何をしようってんだ?
 マネキンの幽霊が出るわけでも無いんだろ?」

BはAの意図がわからなかった、幽霊が出るわけでもない、ただの山道に行っても
しょうがない、もっと幽霊が出そうな場所とか、曰く付きの場所なんて
いくらでもあるだろうに。

「マネキンの幽霊か、確かに出たら面白いよなー」
「あぁ」

「だからさ、俺らで作っちゃおうぜ!」

Aの言葉とわくわくした表情を見た時、Bはやっと理解した。
マネキンカーブと言われている場所にマネキンを置く、それを見て
驚くドライバーを見てやろうと言うわけだ。

「なるほど、そりゃ面白い」
「だろ? Bならわかってくれると思ってたよ!」

AとBは早速道具を揃え始めた。
肝心の体をどうするかBは考えていたが、すでにAは粗大ゴミから
美容師が練習で使うような頭だけのマネキンを拾ってきていた。

「タイミングよく見つけたもんだなぁ」
「実はこれを粗大ゴミで見つけたから今回のアイディアを思いついたんだ、
 逆転の発想って奴だね。」

そう言ってAはマネキンの頭を指でコンコンと叩いた。

体は服の中に発泡スチロールを詰めて膨らませ、手には肌色に塗った手袋を付けた。
下半身を作るか迷ったが、結局吊ってしまうのなら浮いてるように
見える方がいいだろうと作らなかった。

─…

数日経ち、Aが手に入れて来たカツラを被せて髪を整えると
遠目からはちゃんと人間に見えるようなマネキンが出来上がった。

もちろんしっかり見ればマネキンだとバレバレだけれど、
夜中の道路でコレを見たら一瞬では認識はできないだろう。
普通なら「マネキンが浮いている」よりは「幽霊が浮いている」と思うだろうし。

AとBは出来上がりに満足すると、昼間の内に例のカーブへ出掛けた。
仕掛けをして様子を見るにしても、その場所を目撃されたら意味が無い。
昼間の内に下調べをする必要があったのだ。

大学からしばらく車を走らせていくと、道路は次第に山道になり、
いつの間にか山の中を進んでいた。

もともとは隣町に行く為の道だったが、ちゃんとした道路が整備された
現在は、どうしても急ぐ人以外はこの道を使わなくなってしまったらしい。

さらに、この道を知っているのは殆ど地元の人だけ。
結局目的地に到着するまで、誰ともすれ違う事は無かった。

実際にマネキンカーブに到着すると、確かに急なカーブの上にガードレールも無い、
幅はあるから曲がる事は出来るけれど、減速し忘れたり、ハンドル操作を誤ったら
あっという間に谷底に落ちてしまいそうな場所だった。

「しかし、こんな山道のカーブがなんでマネキンカーブなんだ?」
「知らねーよ、俺の親父や爺さんも呼んでるだけで、由来なんてわかんないってさ」
Aはそう言いながら、マネキンを吊るす場所を探していた。
Bも一緒に適当な場所を探すと、しばらくして丁度良い木が見つかった。

「この上から吊るせば通る奴は絶対に見えるし、車にぶつかる事も無いな」
「いいんじゃないか?」

そして少し離れた草の影に、マネキンを隠した。
この山道に車を隠す場所は無いので、一旦マネキンを隠し、
後からバイクで来るつもりだったのだ。

「このマネキン見たら、運転してる奴はどんな反応するかな?」
「驚いて止まって、マネキンって気づいたら、きっと怒って壊されるな」

「ははは、確かに、1回しか出来ないドッキリだ」
「そのために何日もかけた俺らも相当馬鹿だけどな」

AとBは笑いながら山道を戻り始めた、決行は今日の夜と決めた。

─…

その日の夜遅く、AとBは再び集合し、例のカーブへ来ていた。
そして2人は早速、隠していたマネキンを木へ吊り始めた。

「どうだ?」
「もう少し右…右…よし、いいぞ」

吊っているロープを木に巻きつけると、Aは車が通る位置からマネキンを眺めた。

「おおっ、これは結構怖いんじゃないか?」

深夜の山の中で吊るされた生気の無いマネキンは、小さく揺れながら2人を見下ろす。
それは自分達が作ったにも関わらず、とても恐ろしい物の様に見えた。

「よし、隠れようぜ」
「そう言っても、どこに隠れるんだ?」

「斜面の上だよ、車からなら見えないだろ?」
そう言ってAとBは、吊ったマネキンが見下ろせる斜面の上に腰を下ろした。

─…

しばらく、そこには静寂が訪れた。
聞こえるのは虫の声と、風で木々が揺れる音。

もしここが心霊スポットだったら、なんて考えがBの頭をよぎった。
そうしたら、きっと恐怖を体験するのはここにいる俺達なのだろう。

変な事を想像してしまったせいか、周りの雰囲気がどんどん不気味に見えてきた。
そんなBの気持ちも知らず、Aは車が通るのを今か今かと待っている。

─…

それから30分も経ったろうか、遠くから今まで聞こえなかったかすかな音が聞こえた。

「…車だ!」

遠くにうっすらと見えたのはヘッドライトの明かりだった。
この辺りには他の道は無い、あの車は間違いなくここを通るはずだ。

なんとなく怪奇現象に怯えていたBも、この瞬間にはワクワクした。
マネキンを見た車はどうなるのだろうか? 驚いて止まるのか?
すぐに逃げてしまうのか? それとも止まって確認しようとするのか?
きっとあの車は、このカーブにそんな思惑が込められているとは思わないだろう。

「来るぞ!」

2人は思わず息を止め、その瞬間を待った。
斜面の影から現れた車は、そのままマネキンの吊るされたカーブへ進む。

そしてとうとう、ヘッドライトにマネキンが照らされた。





「え?」





2人は信じられない、という顔をして固まった。

「マジかよ…」

「あぁ、これはさすがに予想外だったわ…」

「まさか…」





「素通りとは!」
「素通りとは!」





「ぷっ!」
「ぎゃははははははは!!!」

2人は、堪え切れず吹き出した。
車はヘッドライトでマネキンを照らしたにも関わらず、素通り。
気づいて逃げたと言うわけでもなく、普通にカーブを曲がり消えて行ったのだ。

「やばい、まじでウケる!」
「スルーかよ! それはねーよ!」

ある程度の位置は調整したが、深夜にヘッドライトに照らして試したわけではない。
車高やライトの向きによっては、気づかない事もあるだろう。
ひとしきり大笑いした後、2人はまた次の車が来るのを待った。

しかし、その後2人は何度も首をかしげる事になった。
なぜなら、通る車はみな、マネキンを照らしているにも関わらず
まるでそこに何も無いようにカーブを曲がっていくのだ。

「おかしいよなー、見えないわけないんだけど」
「ちょっと位置直さないか?」

2人は斜面を降りると、浮いているマネキンを一度下ろし再度位置を直した。
その上で、持ってきたバイクのライトでマネキンを照らし、
はっきりと見える事も確認した。

「いいんじゃないか?」
「これで完璧だな」

再び先ほどの斜面に戻った2人は、また車が通るのを待った。
しかし、今度はいくら待っても車が一台も通らない。
時間はもう深夜を回っている、今日はもう誰も通らないかもしれない。

「どうする? 車も通らないし今日はやめとくか?」

BがAに聞くと、Aは携帯電話を取り出し電話を掛け始めた。

「…あ…もしもし、Cか?
 …いや、ちょっと頼みがあってさ…ちょっとでいいんだよ
 あのさ、マネキンカーブって知ってる?…そう…そう山道の…
 今あそこでイタズラやっててさ、1回通って感想聞かせて欲しいんだわ。」

どうやらAは知り合いのCにこの山道を通ってもらうつもりのようだった。
さすがに理由も伝えず来いとも言えない様で、ある程度の事情は説明している。
しばらく話した後、Aは携帯を仕舞いながら言った。

「だいたい10分ぐらいで来れるってさ、内容は言っちゃったから反応は
 期待できないけど、車からどう見えるかわかるし、感想も聞けるぜ」
「それじゃ今日はそれだけ見て、帰ろうぜ」
「おう」

─…

程なく、1台の車がその道へやってきた。
遠目からでもわかる真っ赤な車で、Aは小さく「Cの車だ」と呟いた。

Cの車は徐行よりも少し早い程度で、ゆっくりとこちらへやってきた。
そしてヘッドライトにマネキンが映し出されると、車は音を立てて止まった。

「行こうぜ」
「あぁ」

2人は斜面を降りていくと、ちょうど車からCが降りてくる所だった。

「Aよぉ~、これはちょっと悪趣味じゃねーか?」
「ははは、俺もそう思う」

Cは苦笑いをしながらAにそう言うと、吊ってあるマネキンをジャンプして叩いた。

「なぁ、車から見たらどういう風に見えた?」
「このマネキン、1個前のカーブを曲がって、ちょっと進まないと見えないだろ?
 カーブを曲がるごとに覚悟はしてたんだけど、何も無いって思った瞬間現れたから
 イタズラの事はわかってたのに結構驚いちまったよ」
「車の中からちゃんと見えた?」
「もちろん、こんな道の真ん中に浮いてたら誰だってわかるだろ」

Cは未だにユラユラと揺れているマネキンを指差しながら言った。

「そうだよな、気づかないわけ無いよな」
「まぁいいんじゃね、今日は遅いし、また明日試してみれば」

未だに腑に落ちないBをよそに、Aは能天気に言った。
その後、Cも一緒にマネキンの回収を行うと、3人は山を降りた。

「そいじゃ、また明日な」
「おーう」

山を降りて3人が別れようとした時、表情の冴えないCは2人にこんな事を言った。

「なぁ、AとBさぁ、水をさすようで悪いんだが、あのイタズラは止めた方がいいぞ」
「え、もしかしてあそこって、やっぱり心霊スポットだったりすんの?」

「そうじゃねぇよ、単純に危険だって言いたいんだ。
 あんな場所にあんなもんが浮いてるんだぞ?
 知らない奴が見たら驚いて崖に落ちちまうかもしれねーだろうが」

BはCの言葉を聞いた瞬間、ある事を想像した。
そして「Aさ、Cの言う通りこのイタズラは止めよう」とAに言った。

「なんでだよー、おまえだって乗り気だったじゃねーかよー」
「そうだけど、Cの言う通りだと思うしさ、イタズラで人死になんて嫌だしな」

不満そうなAをなだめ、Cにはお礼を言い、3人は帰途についた。

─…

それから一週間程して、心霊サークルの部室にはBに呼び出されたAとCの姿があった。
2人が揃ったのを確認すると、一週間前より明らかに元気の無いBは
ゆっくりと喋り始めた。

「わかったんだ、あのカーブが何でマネキンカーブって呼ばれているのか」
「へぇー」

Aはどうでもいい、と言う風に聞いている。

「そもそも、あの急で危ないカーブがなんで補修されないと思う?」
「だってあんな山道誰も通らないじゃん」Aは当たり前だろうという風に答えた。

「違う、実はあのカーブでは、ここ数十年で1度も事故が起きていないからなんだ」
「そういや、事故ったなんて話は聞いた事無いな」Cも少し驚いている。

「この町の古い資料を漁ってみたんだけど、あの山道は昔もっと細くて
 人や馬の滑落が後を絶えなかったらしい」

Bは2人の顔を見て話を続けた

「そこで村の人は、安全祈願と供養のために地蔵を奉ったんだ」
「そんな神頼みするぐらいなら、道の整備でもやっとけって感じだ」





「その地蔵は、”人を死へ招かない”って意味を込めて…」





「”招かん地蔵”と名づけたそうだ…」




「まね…かん…?」
Bの一言に、適当に聞いていたAもその瞬間表情が強張った。
Bは話しながら、すでに血の気が引いている。

「そう、そして、その事を知ってわかったんだ、
 あの日、カーブにマネキンを置いても誰も気づかなかったわけが」
「それは…きっと…たまたま気づかなかっただけで…」

「気づかないわけないだろ!」

Aの言葉を打ち消すようにBは怒りを露にして叫んだ。

「Cが言ったろ! ”アレに気づかないわけが無い”って!
 Cはイタズラがあると知ってた! 山道を慎重に進んだ!
 だから事故にもあってないし、マネキンも見えたんだ!」

「じゃあ、他の車はあのマネキンを見逃したんじゃなくて…」
「…きっと、本当に見えてなかったんだ。
 もし何も知らずにあそこでマネキンを見たら、間違いなく事故ってる…」

その事実に、3人は黙ってしまった
いつの間にか地蔵の存在も忘れられ、名前すら歪められ伝わってきた形だけの噂話。
それでもなお、あの場所には役目を仰せつかった「何か」がある。
あの日起こった「何も起きないという不自然」が、その存在を際立たせている。

どれぐらい経ったろうか、沈黙が支配した部室内で最初に声をあげたのはBだった。

「…もうさ、あの場所には近づかない方がいいよなー?」

Bは暗い雰囲気を打ち消すように、できるだけ明るく2人に言った。
押し黙っていた2人も、その言葉に頷いた。

その後、ゆっくりと、緊張をほぐすように雑談が始まる。

「あーあ、もう心霊サークル辞めるかなー」
Aは呟いた。

「そうそう、こんなサークル辞めちまえ辞めちまえ」
Cは苦笑いして後押ししている。

「そう言うCは? どっか入らないのか?」
Bは反論するように質問した。

「俺は車があればいいの、サークル入ってる時間なんて無いの」
「車サークル入れよ」

「…なんだよ車サークルって?」
「えっ? 車乗るに決まってんじゃん」

「今と変わんねーだろ!」

「ギャハハハハハハ!」





それから一週間後…





AとBは、謎の失踪を遂げた…





後にCは語った。
「Bが言った地蔵は、人間を守っている代わりに
 事故を起こそうとする人間は、きっと何があろうと許さないんだ…」






某県某所…

そこには事故も無く…

誰も死ぬ事の無い…

安全な山道が存在している…






おしまい
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★コメント

「あとがき」
この話は「非日常的な事が起きる」ホラーではなく、
「非日常的な事が起こらない」ホラーと言うコンセプトで作成しました。

きっとマネキンに何かある、と思って読んだ人も多いんじゃないですかね(笑
2007.08.17 | 名前 地球 | URL | EDIT
見事に予想を裏切られましたw
2007.08.22 | 名前 不明 | URL | EDIT

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